友達の起業に付き合ったらいろんな地獄を見た話 ~廃業編~

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僕は現在IT企業でエンジニアとして働いています。しかし、エンジニアになる前は友達が会社を立ち上げるというのでそこに参加していろんな、、、本当にいろんな経験をさせていただきました。
今となってはたまに話のネタにして笑ったりしていますが、その当時は大変でした。

前回の記事では、仕事のトラブルからメンバー間の雰囲気が悪くなってしまい、その結果として会社の精神的支柱だった営業担当のH君と映像制作のエース的存在だったフランス出身映像クリエイターのBさんが会社を去ってしまいました。

前回の記事↓

登場人物のおさらい

T君
21歳のフリーター。起業して成功することを夢見てアルバイトをしながら会社設立の準備を進めていた。ついに会社を設立し、起業家としてのスタートを切った。

営業担当のH君
当時、大学生。アルバイトで営業の経験があり、そのバイトで関東地区トップ10に入った実績があるとのこと。
すでに退社。

企画担当のS君
当時、大学生。大学でイベントサークルに所属しており、いろんなイベントの企画をしていた経験から今回、企画担当として参画。

起業家のIさん
T君の高校時代の先輩。大学在学中に起業し、3年で海外進出した。T君の会社設立に出資しており、T君にとっての相談役となっている。
シンガポール在住。

映像クリエイターのKさん
僕が通っていた映像制作の学校で同じクラスだった人。元バンドマンの経歴を活かして音楽を上手く使った映像が特長。

フランス出身映像クリエイターのBさん
アメリカの大学で映像制作について学び、アメリカの映画関係の会社で数年間勤務。
彼氏が日本人ということもあり、日本で生活している。
すでに退社。

孤独に独学

前回の記事でも少し触れましたが、映像制作のエースだったBさんがいなくなってしまったことで映像制作が中心だった会社の事業を映像制作だけでなく、ホームページ制作も事業の柱にしていこうと社長のT君が決断しました。
それ以前にもホームページ制作の仕事を受注していましたが、営業として仕事を獲得するところまでで制作はT君の知り合いの制作会社に依頼していました。
そこをこれからは営業だけでなく制作までできるようにしようということでした。
ということで、会社としてホームページ制作ができるように、まずは僕がHTMLやらなんやらを勉強することになりました。

独学です。もちろん。
まずはホームページを作るにはHTMLというもので土台を作ってCSSというもので見た目を整えていく、さらにJavaScriptというものを使えば動きをつけたりすることができる。ただ、JavaScriptというのはプログラミング言語で…。と本当に手探りでやってました。これが後にIT企業に就職する伏線になっているとはこのときはまったく想像していませんでした。

このときは全体ミーティングもずっと中止のままで少しずつメンバーとの連絡も少なくなっていました。
完全に孤独の中でホームページを作るにはどうすればいいの?HTMLを理解すればいいの?CSSっていうのも必要なの?JavaScriptも使えるようになっておいたほうがいいの?
何をどこまでやればいいの???

一方、僕が孤独に独学していたころ、会社では大きな動きがありました。後で聞いたのですが(なぜ教えてくれなかった…)、企画担当のS君が他の会社に転職することになったのです。S君が所属していた大学のイベントサークルの友達が起業したそうで、そちらの会社を選んだとのことでした。

T君は大激怒でした。そのS君の大学のイベントサークルの友達はT君も顔見知りだったのです。当然、S君がT君の会社で働いてるのも知っています。そのうえでS君を誘ったということになります。
T君からすれば会社のメンバーを引き抜かれた、それも知り合いに。三角関係のもつれですね笑。

T君は必死にS君を引き留めました。S君の企画担当としての能力に会社のみんなが感心していました。
H君やBさんに続いてS君がいなくなったら、会社の終わり…というか続けようがありません。

S君は会社を去りました。
それ以降、僕がメッセージのやり取りの中で何気なくS君の名前を出すとT君が怒るようになりました。
「そいつの名前は出すな」

なぜ、こんなことがあったのに僕がS君の名前を出すのかって?
だって、このときはまだS君が会社を辞めたことを知らないから。僕がS君が会社を辞めた経緯を知るのはずぅっと後の話。

T君とS君がいろいろあったとき、僕は孤独に、そしてのんきに、
「JavaScript、めちゃくちゃ面白いじゃん!!」
って、プログラミングが面白いことを知って喜んでいました。

無駄になったポートフォリオ

僕の知らないところで会社を終わりに向けて動いていました。この頃、T君は自社だけではどうにもならないと感じて経営者が集まるいろんなパーティや勉強会、セミナーに参加して一緒にビジネスをやってくれるようパートナーを必死に探していたそうです。
ときには、異業種交流会に参加してまったく別の分野の会社と協力すれば何か光が見えてくるのではないかと考えてもいたそうです。

ただ、会社の規模的にも実績的にも駆け出しのT君の話を聞いてくれる人はなかなかいなかったそうです。いたとしても、ちょっと怪しげな話を持ちかけられたり、ときにはとんでもなく安い金額で会社の買収の話が来たこともあったそうです。

T君のプライドはズタズタだったそうです。後にT君がとある経営者に「1万円で君の会社買ってあげようか?」って言われて一万円札を目の前でひらひらされたときが人生で一番の屈辱だったそうです。

結局、いろいろやってみたけれど結果にはつながらず、T君は自社で人を集めることにしました。

同じころ、僕はそれなりにHTML、CSS、JavaScriptが使えるようになったのでポートフォリオというものを作ってみることにしました。
それは、僕のポートフォリオというより会社のポートフォリオ。会社として仕事を獲得するには需要のあるホームページが作れます!というアピールをする必要があります。
なので、とにかくいろんな業種のいろんな会社のホームページを参考にして、こういう業種の会社ならこんなホームページを作ります。こちらの業種ならこれ!っていう風に自分なりに作ってみてポートフォリオを準備しました。

あるとき、T君から「話したいことがあるから今度時間作れる?」と連絡がきました。僕はT君にポートフォリオを見てもらいたかったのでワクワクしました。

僕:「いつでも大丈夫です!」

予定より早めにポートフォリオを完成させて当日、T君との待ち合わせ場所に向かいました。

経営者T君との最後の会話

久しぶりにT君と会いました。
なんとなく想像していましたが、かなり痩せこけていました。ただ、スーツや靴は良いものを着ていたので「たぶん頑張ってるんだろうな。。。無理して。」と思いました。
そのスーツや靴は会社の代表としての責任の表れのようでした。今までだったら「良いスーツを着て羨ましいな。」と思ったのでしょうが、状況が状況なのでちょっと痛々しく見えました。

さっそくT君にポートフォリオを見てもらいました。

T君:「めちゃくちゃいいじゃん!なにこれ!思ってたよりクオリティ高いよ。」

めちゃくちゃ嬉しかったです。
独学で勉強していたときは孤独だったけどそんなことは全て吹き飛んでいったような感覚になりました。

僕:「これでホームページ制作の仕事取ってこれそう?」
T君:「これだけのものが作れるなら自分でやっていけるじゃん!IT系の会社に就職するのもありだし。」
僕:「は?どういうこと??」
T君:「うちの会社はもう厳しいんだ。さすがに人の人生を背負う責任はとれない。」
僕:「でも、会社のポートフォリオが出来たからこれ使って営業してみてよ。」
T君:「これは会社のポートフォリオじゃなくて、お前のポートフォリオだよ。」

T君からポートフォリオが返されました。
これは僕のポートフォリオだそうです。

その5日後、T君から「廃業した」という連絡がきました。
あのとき、会ったときにはもうすでにT君は廃業の手続きをほとんど完了していたそうです。

まとめ

今回は僕が孤独の中でホームページを作るためのスキルを身につけていく一方でT君は会社存続のために試行錯誤するところをまとめました。

もう少し早くホームページ制作のスキルを身につけていたら間に合ったのかな、とか、今振り返るとそんな風に思ってしまいます。

おしまい。

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